このサイトについて
「スタジオ・フレッシェ」では、西澤健一作品の啓蒙と、西澤健一&美歌、
デュオ・フレッシェの活動支援を目的として、西澤健一が作・編曲した作品
(出版・契約済みの作品を除く)の楽譜を、冊子、またはPDFにて販売しております。
楽譜販売の目的
「エストレリータ」がマヌエル・ポンセに財ではなく名声のみを与えたように、
ただでさえCDのリリースや楽譜の出版が必ずしも作家啓蒙や生活支援のツールと
ならない現況において、私は従来的な団体による作品管理、著作権管理に懐疑的な
態度を取っています。平たく言えば、あまりにも作家に優しくない制度に縛られて
創作活動を行わなければならないという、決して意味深くない試練を、芸術音楽の
作曲家は与えられているのです。
その試練を黙って受け入れたとしても、現代作品や、特に若手作家に積極的に関わっていけるほど余力の
ある出版社は稀です。そこで現代作品の多くは、作曲家たちによる自治的な組織において出版するか、
現代作品を支援し専門に扱う出版社で出版するという選択をするのですが、それは芸術に対する
良心の発露であることは間違いないものの、現代日本人作家の楽譜を手に取る演奏家の数は決して多くはない
ゆえに、どうしても高額になってしまうという歯がゆさを抱えています。
私も、あるいくつかの作品において、非常に好評を得ることができ、私自身の意志とは関係なく
作品が広まっていった機会を有り難くも経験することがありましたが、上のような理由で、
残念ながら出版が現在の作家にとって「非現実的な手段」であり、実際的な作品の流通は個人間の
やりとり…悪く言えば複製…に頼る現状に変わりはありません。
もちろん作品が広まること自体は私にとって嬉しく喜ばしいことではありますが、本来ならば作家が出版で得られるべき
利益はありませんし、重い関税が掛けられているかのような「著作権使用料」は、せっかくの思いで
演奏家が払ってくれたであろう金額の半分ほどしか作家の手元に届きません。結局、作曲家はその分の
経済活動を他の形で行わなければならず、まったく外的な理由によって創作活動に専念できないという
悪循環も生じます。これは著作権法の精神とは著しく違うものであると思われるのです。
自ら楽譜を売ろうと思ったのは、このような経緯によります。
ご存知の方もいらっしゃるように今までもサイト上で楽譜や音源を販売しておりましたが、
すでに誰もが評価している作品ではない作品を練習しなければならない苦労を少しでも緩和するべく、
演奏家たちに、さらに安く、それでいてまず楽譜として安定した品質の装丁を整えるべく、
しばらくの休止を賜り、試行錯誤し、今まで皆様から頂いた代金を有効に活用させて頂きました。
特に室内楽では、名声ある演奏家でも厳しい経済状態で取り組まなければならない
環境にあることを、私は見てきました。まさしく労ばかり多く益の少ない、
自己犠牲的な尊い行為です。そして、私の作品リストは、ほとんどが室内楽で埋められています。
私の作品を取り上げてくれる音楽仲間たちの経済を圧迫するような制度に甘んじている
現状を私は恥じています。準備が整い次第、将来的には、著作者人格権以外の権利を放棄する旨を
正式に公表しようと思います。
自作品の啓蒙を第一義に据えてはおりますが、私自身は私の作品を評価
すべき立場にはおりません。作品をお渡しすることよりも、私が新たな出会いに
期待していること。新たな出会いを欲していること。実は、それが、このサイトの
最も大きな目的でありますし、協力しあうことこそが音楽家の築くコミュニティの最
も誇るべき美徳であると信じています。今の私にとりあえず出来ることは、このような
ことぐらいしかありませんが、作曲をする人と、演奏をする人。お互いが顔を見せ合い、
腹を割って理想を共有し、音楽にとって更に良い環境を作り上げられるよう願っています。
2008年4月22日
西澤健一